2018年2月17日土曜日

シューマン:ピアノソナタ第1番 嬰へ短調 作品11(解説 ヴァラーシュタイン西原典恵)

この曲は、初版が
「フロレスタンとオイゼビウスによるソナタ(クララに献呈)
と題されたように、
いわばロベルトからクララへ、
フロレスタンとオイゼビウスを通じての
音楽のラブレターのようなものです。
シューマンの架空の団体「ダヴィッド同盟」
に属する二人の主人公、
明るく外向的な性格のフロレスタン、
静かで内向的な性格のオイゼビウスが
代わる代わる登場します。
この極端に異なる性格の二人は、
シューマン自身の内面性に反映されています。

18321835年に作曲され、
それまでは幻想曲や変奏曲といった小品に
取り組んできた作者が
初めてソナタ形式の大作に挑んだもの。
しかもソナタ形式にもかかわらず、
型破りで自由な発想が時折見られます。
そういうことからも、
古い習慣を破って新しいものに取り組むという
二人の主人公の登場は、 
この曲の内容にしっくり来る気がします。

1楽章・・・1832年作の
「アレグロファンダンゴ(スペイン、アンダルシア地方に伝わる舞曲リズム)
を改作したもの。
ゆったりとした長大な序奏に続き、
ファンダンゴの激しいリズムによって
楽章全体を支配している。
フロレスタンを思わせる。

2楽章・・・1827年自作の歌曲
「アンナに寄せて」に基づいた美しい楽章。
オイゼビウスの要素。

3楽章・・・軽快なスケルツォ。
中間部はポロネーズ風の間奏があり、
途中自由なレチタティーヴォが用いられ
「オーボエ風に」という指示もある。

4楽章・・・分散和音に始まる長大な終楽章。
転調もしょっちゅう、様々な要素が盛り込まれて、
形式的にも複雑さを極める。

フロレスタンの動、
オイゼビウスの静が
どこで表現されているかを見出しながら聞いていくと
面白いと思います。
文字通り、
シューマンの音楽と
文学が融合された一曲です。
シューマン夫妻が住んでいた
このデュッセルドルフの地で
演奏できることを嬉しく楽しみにしています。



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